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「名もなき」じゃない。立派な仕事を“雑用”と呼ぶ会社の話

朝イチで出社すると、コピー機が「ピーピー」鳴っている。紙切れだ。
あーまたか、と紙の束を持って補充する。すると隣の男性社員がコーヒー片手に「助かる〜」と笑う。
いやいや、助かるじゃないのよ。あなたの会議資料もこの紙から生まれてるんですけど?
しかも私、まだコートも脱いでないんですけど?

コピー用紙の補充だけじゃ終わらない。
シュレッダーのごみ袋交換も、なぜか私の担当。あの「キュルキュル…ガッ…」っていう音が聞こえると、条件反射で立ち上がる私。もはや Pavlov の犬。
袋を替えてる間、周囲の人は…なぜか見てるだけ。応援はいらない、手伝え。

幸い、うちの会社ではお茶くみ文化はもう廃止された。でも、取引先や友人の話を聞くと、まだ現役の会社もあるらしい。
「おもてなしだから」とか言いながら、女性だけにやらせるあの昭和儀式。茶葉の残量チェック、急須の洗浄、湯のみの水滴拭き。これ、全部業務だからね?評価してよ。

机拭きも同じ。
自分の机ならまだしも、共用デスクや会議室の机まで“気がつく人”が勝手に担当にされる。
「最近机が汚いよね」って言われるときだけ急に“みんなの机”扱いになるの、不思議じゃない?
じゃあ全員で拭きません? なんなら拭きながら会議します?

電話の取り次ぎも昭和遺産だ。
電話が鳴っても男性陣は完全スルー。まるで着信音が耳に入らない特殊能力を持っているかのよう。
結局、女性が取るのが暗黙の了解。
「〇〇さん、電話です」と伝えると、「今忙しいから聞いといて」って平然と言われる。
じゃあ私が全部対応して、その分の手当をいただいてもいいですか?

そして地味に嫌なのが「お土産配り」。
誰かが旅行や出張で買ってきたお土産を、なぜか事務の女性が配るという謎ルール。
箱から出して整列させ、一人ひとりに声をかけ、「甘いの苦手」とか言われたら別の人に回す。
余ったらまたまとめて片づける。
いや、自分で配りなよ。買ってきた人がやるのが一番自然でしょ?


営業との給与差って何?

ここでふと思う。
営業と雑用の給与差って何?理由はだいたい「会社の利益を稼いでこないから」。
はいはい、じゃあこっちも営業やりますよ。
その代わり、営業さんがコピー用紙補充して、シュレッダー袋替えて、お土産配って、電話取って、机拭いてください。
それで給与、一緒にしましょう。

営業が売上を作るのは確かにすごい。
でも、その売上から生まれる業務を支えてるのは誰?
見積書を印刷する紙がなければ契約も進まないし、会議室の机がコーヒーでベタベタなら商談も台無し。
雑用がなくなった会社は、砂の土台にビルを建ててるようなものだ。

「利益を稼いでこない」じゃなくて、「利益を稼ぐための土台を整えてる」と言ってくれたら、まだやる気も出る。
それを雑用扱いして、給与も上げず、評価もしない?
だったら、もうその土台づくり、やめてもいいですか?


これら全部、会社が正常に回るための“インフラ業務”だ。
なのに評価はゼロ、給与は据え置き。
理由はひとこと——「雑用だから」。

ちょっと待って。
その雑用をやらせてるの、会社ですよね?
コピー用紙がなければ資料は印刷できないし、シュレッダー袋がなければ機密書類は処理できない。
机や電話やお茶やお土産配りだって、“雑用”じゃなくて業務です。
評価しないなら、コピー用紙も机も電話も使わないでいただきたい。

結局こういう仕事って、「気がついた人がやればいい」という空気で、女性や“気が利く人”に押しつけられる。
でもそれって、人件費の搾取ですよ?
会社の経費を社員の善意でタダ回ししてるだけ。節約じゃなくて、寄生です。

だから私は密かに決めている。
「雑用だから評価しない」というなら、その瞬間から私はやりません。
紙がなくても、袋が詰まっても、電話が鳴りっぱなしでも、知りません。
その間、私は静かに自分のタスクに集中しながら、隣でコピー機が「ピーピー」鳴くのをBGMにコーヒーを飲みます。
——だって、それがあなたたちの言う“雑用”なんですよね?

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この記事を書いた人

40代で突入した「更年期という異世界」──。
ホルモンの波に飲まれながら、それでも笑って進む旅の記録。
書き手:ふぇみにーぬ(エッセイスト/Threadsで生き延びてる人)

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